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Mirror

「視線がいっぱい集まって、注目される時、それはミラーボールになる。」

 

人々が何かに注目するとき、個々人から注がれる視線に対して、1つ1つ正対する鏡があると想定します。たくさんの人々が同じ対象に注目していても、個人と対象の関係はあくまでも1対1の構図ということが言えます。視線は一直線に対象に向かい、そして返ってくる。熱狂したり、悲しんだり、自分と重ね合わせたり、視線の反復運動の中で個人の考えは膨らんでいく。1人につき1枚の鏡、それが集積すると、そこには、その対象にそっくりなミラーボールが出現する。そんな、人々の視線と思考の集積を顕在化させようと試みたのが本作「Mirror」の作品群の基本的な考え方です。本展では、そんなMirrorの様々な可能性を感じながら、見慣れたものが鏡張りになる非日常感やビビットでソリッドな画面を楽しんでもらいたいと考えて企画しました。

 

 本展覧会でモチーフにした鏡ですが,その中でも3つのテーマに分けて制作しています。1つは石膏像をモチーフにした「Figure」シリーズ。2つ目は名作絵画をモチーフにした「Masterpiece」シリーズ。3つ目は対象がミラーボールになったら?と考えて描いた「Mirror ball」シリーズ。それぞれ,制作意図が少しずつ違います。

 

 「Figure」シリーズは学生時代(もしくは浪人時代)に美術大学に入学するため、ほぼ全員が技術収斂としてデッサンを行う石膏像がモチーフです。石膏像1に対して出来る作品は本当に様々です。つまり石膏像を描くということは,モチーフの形を借りて自分のイメージを描いていると言うことができると考えました。そうなると石膏像(描く対象)は自分を映す鏡と言うことができます。鏡となった石膏像は、乱反射しながら多数の作家と向き合い、多種多様の作品が生まれます,この視線の集積を一枚の作品として描きたいと考えてこれらの作品を制作しました。

 

 「Masterpiece」シリーズは名作絵画をモチーフにして制作しました。作品を鑑賞する距離や角度は,誰一人として同じではありません。それぞれの場所で,様々な感想を抱きます。本作は名作絵画の形式を借りて,そんな鑑賞者の視線やそこで抱く想いなどを集積して,ひとつにまとめようと試みたものです。(海外の有名美術館の有名作品は,本当に人だかりができます。身動きが取れなくなります。)

 

 「Mirror ball」シリーズは,実際にフロアでミラーボールとして回してみたい対象を作品化しました。対象となっているのは,作家が考えるカリスマ(の一部)です。カリスマ性のある人物や物の周囲には必ず人だかりができます。これらの作品がダンスフロアなどに展示され,回転している様子を想像するとワクワクしてきます。そんなことを考えながら制作しました。

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